過払い金が発生する取引期間の目安
過払い金が発生しているかどうかは、取引の内容によって一概にはいえません。
グレーゾーン金利で返済していたことが最低限の条件になりますが、その期間が5年以上であれば過払い金が発生している可能性があり、7年以上であれば過払い金が発生している可能性が非常に高く、10年経過すれば50万円以上の過払い金があることは確実と考えてよい、と言われています。
(但し、直近に借増しをした場合や、小口の返済・借入れを頻繁にしていた場合などは除きます)
5年以上取引を継続している場合には、過払い金が発生しているのではないかと疑ってみましょう。
まず初めは開示請求です
過払い金を計算するためには、まず初めに過去の取引履歴を確認し、それを基に「引き直し計算」をする必要があります。
貸金業者は保有している取引履歴を利用者本人に対して開示する義務を負っていますので、自信をもって取引履歴の開示請求を行いましょう。
取引履歴の開示を請求するには、貸金業者に「取引履歴開示依頼書」、場合によっては本人を証明する書類(※運転免許証のコピーなど)を郵送するだけです。
「取引履歴開示依頼書」のフォーマットは、自分で準備をしても構いませんし、貸金業者に直接問い合わせて、必要な書類を聞いても構いません。
悪質な業者でない限り、きちんと教えてくれます。
自分で用意する場合には、氏名や生年月日、住所、電話番号など、自分を識別出来る情報と、貸付当初から現在までの(最終取引)までの取引履歴全ての文書の開示を求める旨だけは最低限必要です。
郵送先は、各貸金業者に電話で問い合わせるか、ホームページを確認しましょう。
通常、1ヶ月~2ヶ月で開示されるのが普通です。
取引履歴がない場合
貸金業者は、保存期間を経過しているものも含めて、実際に保存している取引履歴について開示する義務があります。
義務があるにも関わらず取引履歴を開示しないというのは、業者側にとって都合が悪いことが起こると思っているからに他なりません。
強気に請求をしていきましょう。
開示請求は文書で行うようにしましょう。さらに文書のコピーと、郵送する際には、書留で送付するようといいでしょう。
明示的に「開示しない」とは言わないけれども、いつまで経っても開示しない業者も中には存在します。
その場合、取引履歴を開示する、しないで争って時間と労力を費やすよりも、記憶を辿ったり、一部の取引履歴から引直計算をして、過払い金を確定させて裁判を起こした方が得策です。
また、全国各地にある財務局か都道府県庁の金融課に相談し、行政指導を頼んでみるもの一つの手です。
さらに、通帳や明細など、自分で持っている証拠に関しても、出来るだけ集めておくのが良いでしょう。
推定計算とは
全ての取引履歴が開示されなかった場合、推定計算により引直処理を行います。
推定計算の一つ目の方法は、手元にある資料や記憶に基づいて、実際の取引を推定するという方法です。
推定計算をする場合、全てを正確に記憶していることなど所詮無理な相談です。
元々取引履歴の開示義務を怠った貸金業者の責任逃れに端を発しているのですから、借り手側の責任ではありません。
ですから、取引開始日の数年程度のずれや返済日の数日のずれ、数万円の返済金額の誤りは、取引履歴を再現するにあたって許容される範囲です。
取引履歴が事実と異なり、貸金業者が損をする取引履歴が再現されていれば、貸金業者はそれを指摘し、反論するでしょう。
その際には、確かにその通りだと思えば、その時に素直に取引履歴を修正して、請求金額を正せばよいだけです。
取引を思い出す時、下記を念頭に置いて考えるのがいいでしょう。
-結婚・出産など、イベント関連で借りた取引を思い出す
-借入順序・借入時期を思い出す
-月々の返済額を思い出す
残高無視計算とは
推定計算のもう一つの方法として、残高無視計算があります。
これは開示された取引履歴の最初の貸付残高を0円として計算する方法です。
貸金業者の中には、10年分以上前の古い取引履歴は開示しないという対応をするところがあります。
貸金業者のこのような対応をされた場合、残高無視計算で引直計算をして請求することは非常に効果的です。
残高無視計算は、取引履歴の開始時点での借入残高を0円と確定して主張するということではありません。
このような計算の根拠は立証責任の所在にあります。
取引履歴の一番最初に「残高」があったことを立証すべきは、その残高があったことを主張する債権者にあると考えられます。
訴訟のルールで、もし債務者が「残高」について否認した場合、債権者が「残高」があったことを立証しなければならないからです。
過払い金の計算方法
貸金業者の違法な利息を法定利息に直して利息の計算をやり直すことで、過払い金を計算します。
これを「引直計算」と呼びます。
法定利息とは、下記利息制限法による上限利息を指します。
・10万円未満 20%
・10万円以上100万円未満 18%
・100万円以上 15%
注意が必要なのは、上記利息は「極度額」や「借入限度額」を基準に設定される点です。
例えば、極度額が50万円で契約を締結し、実際は10万円を借り入れた場合、利率は18%となります。
また、極度額を150万円として、貸金業者から150万円を借り入れ、これを分割して毎月5万円ずつ返済していった場合、元本は、100万円を切り、やがて10万円を切ることになります。
このように元本が減少した場合でも、完済に至るまで極度額の150万円を基準として15%の利率のままで引直計算を行います。
最後に、引き直しの結果の金額に利息の5%をつけて、請求する過払い金が確定します。
パソコンを使用した過払い金の計算
過払い金の計算を電卓で行うことは、とても手間の掛かることです。
インターネット上にエクセルなどを使用したソフトウェアが無料でダウンロード出来るので、それを利用して計算するのが良いでしょう。
下記にパソコンで利用できるソフトウェアをご紹介致します。
※携帯からはご利用出来ません。
ソフトウェア その1(名古屋消費者信用問題研究会)
ソフトウェア その2(Vector)
返還請求通知書の送付方法
引直計算を行って過払い金が発生している場合には、貸金業者に「過払い金返還請求通知書」を送付します。
「過払い金返還請求通知書」とは、貸金業者に過払い金を請求する請求書です。
「過払い金返還請求通知書」には、下記点を忘れずに記載しましょう。
-自分の氏名・住所・生年月日
-過払い金元金と利息
-振込先口座
-貸金業者の会社名・住所・部署名
さらに、1ヶ月以内にお振込下さい、などきちんと期日を記載します。
特にフォーマットにこだわる必要はありません。
きちんと過払い金について請求している旨を伝えることが重要です。
「過払い金返還請求通知書」が準備出来たら、それに引直計算で使用した計算書を添えて郵送します。
郵送の前に必ずコピーを保管して、書留で郵送をするようにしましょう。
0円和解とは
取引履歴の開示を請求した時や、返還請求通知書を送付した段階で、貸金業者から「0円和解をしませんか?」と言われることがあります。
0円和解とは、相互に債権・債務がない状態とすることです。
この提案を安易に受け付けることはあまりよくありません。
貸金業者が0円和解を提案するということは、過払い金が発生しているということに他ならないからです。
0円和解をする唯一のメリットは、借金が即0円になるという早期解決のみです。
安易な0円和解は避け、きちんと過払い金を請求するのが良いでしょう。
みなし弁済に対する反論
みなし弁済とは、厳格な要件を満たした場合に、例外的に利息制限法の法定利息を超えるグレーゾーン金利の支払いが有効になるという規定です。
要件とは下記4点を指します。
-貸金業登録をした、貸金業者であること。 -貸金業者に対する利息、または損害金としての支払いである場合。
-法定利息を超えた金銭を、お金を借りた側が任意に支払った場合。
-貸金業者から書面の交付を受けていること。
裁判所の判例では、みなし弁済が認められることは、ほとんどありません。
それは、「任意」の支払いというのが、本当に任意でない場合がほとんどだからです。
支払い遅延に対するグレーゾーン金利の支払いは、約束した期日に遅れたら一括請求しますという「期限の利益喪失約款」によって強要されていたり、または支払わなければいけないという借り手側の誤解から生じているからです。
貸金業者がみなし弁済を主張してきた場合、判例を利用して貸金業者の主張に根拠がないことを強く主張するのがいいでしょう。
資料の準備
貸金業者に過払い金返還請求をして応じてもらえない場合や、和解の内容に納得がいかない場合、過払い金返還請求の訴訟を起こすことになります。
訴訟を起こす場合、まず資料を準備してから訴状を作成します。
準備する資料は、下記4点です。
-開示された取引履歴
-引直計算書
-過払い金返還請求通知書
-貸金業者への資料を送付の際の配達記録
その他、訴状を提出する場合、収入印紙、郵便切手、貸金業者の登記簿謄本が必要になります。
登記簿謄本は、法務局に直接出向くか、または郵送でも取得できます。
訴状の書き方
訴状には大きく分けて「請求の趣旨」と「請求の原因」の2つのポイントがあります。
請求の趣旨には、過払い金に利息を乗せた金額○○円を○○日までに支払って下さい、という内容と、裁判費用は貸金業者が負担して下さい、という2点を記載します。
請求の原因には、金銭消費賃借契約を特定するため、当事者・契約締結日・最初の借入金額を記載します。
約定利息や返済回数、返済場所までの記載は不要です。
契約書がなく、推定計算により訴訟提起をする場合、記憶に基づいて、当初借入の日付・当初借入金額を記載します。
残高無視計算の場合、当初借入日、借入金額は特定できないので、少なくとも分かっている借入日または返済日からという形で記載します。
個々の取引の内容は、引直計算書を別紙として提出をすれば問題ありません。
推定計算における返済期日の数日のズレや返済額の多少のズレは、訴訟提起の段階では許容範囲です。
具体的には弁護士に調整するとよいでしょう。
訴状の提出先
訴状の提出先は、法律上請求金額が140万円以下であれば簡易裁判所に、請求金額が140万円を超える場合には地方裁判所に訴状を提出することになっています。
金銭消費賃借契約には、貸金業者が指定する裁判所(合意管轄)が記載されていることがほとんどだが、距離的に遠いと平等の観点から原告の住所に近い裁判所を認めてもらえることがほとんどなので、最寄りの裁判所に提出をするのがいいでしょう。
訴状から和解まで
裁判になったらお互いの主張を述べ合う形になるので、出来るだけ多くの証拠を集めておくことが重要です。
重要な証拠となる契約書や請求書・領収書や、預金通帳の口座の引き落とし記録や銀行から取引明細と取り寄せるなど、可能な限りの証拠を集めておきましょう。
推定計算や残高無視計算を元に過払い金請求をしていて、それが間違っていたとしても、貸金業者の主張に基づいて訴えの金額を変更すればいいだけです。
○訴訟提起から和解までのフロー
-訴状受理
裁判所から貸金業者に訴状が郵送される。第1回口頭弁論期日の連絡がある。なお、第1回口頭弁論期日の前に、被告である貸金業者から答弁書(相手方の反論。計算方法や消滅時効の主張)が届く。
-第1回口頭弁論(訴訟提起後1~2ヶ月)
通常、被告の出廷がなく、進展しない。 -第2回口頭弁論期日(1ヶ月後)
被告の反論に対する原告の再反論を書面で提出
-第3・4回口頭弁論期日(各1ヶ月後)
被告の再々反論(計算方法・消滅時効の証拠を提出)。それに対する原告の反論の繰り返し。多くはこの時期に裁判所からの和解勧告がある。
-第5・6回口頭弁論期日(各1ヶ月後)
原告もしくは被告から訴訟外の和解案をFAXで提示した上、交渉を行う。
-第7回口頭弁論期日(1ヶ月後)
裁判所に和解条項案を書面で提出。裁判所は和解調書を作成し、裁判が終結。
-和解
被告から原告の指定する振込口座に、和解調書に記載された金額が振り込まれる。
移送申立てへの対抗手段
過払い金返還請求訴訟を起こした時、貸金業者から実際に裁判を行う裁判所を、貸金業者の本社所在地を管轄する裁判所に移送するよう申立てがある場合があります。
これは、地理的に離れたところに裁判を持ってくれば原告側が諦めるだろう、という目的を持っていることが多々あります。
消費賃借契約書にある「貸主の本店所在地を管轄する裁判所を管轄裁判所とすることに合意します」という条項を法的な根拠として、移送を主張してきます。
貸金業者が移送を申立ててきた場合、臆することなく反論をしましょう。
反論は、下記3点を軸にするのが一般的です。
・貸金業者は資本金○○円、従業員数○○人、店舗・営業所○○数、など貸金業者が経済的に優位であること。
・自分の月収や養うべき家族があること、その他借入など、自分が遠隔地で裁判を行う費用がないこと。
・事情をよく知っているのは、本社の人間ではなく、支店の窓口担当であること。
移送申立てへの対抗手段
過払い金返還請求訴訟を起こした時、貸金業者から実際に裁判を行う裁判所を、貸金業者の本社所在地を管轄する裁判所に移送するよう申立てがある場合があります。
これは、地理的に離れたところに裁判を持ってくれば原告側が諦めるだろう、という目的を持っていることが多々あります。
消費賃借契約書にある「貸主の本店所在地を管轄する裁判所を管轄裁判所とすることに合意します」という条項を法的な根拠として、移送を主張してきます。
貸金業者が移送を申立ててきた場合、臆することなく反論をしましょう。
反論は、下記3点を軸にするのが一般的です。
・貸金業者は資本金○○円、従業員数○○人、店舗・営業所○○数、など貸金業者が経済的に優位であること。
・自分の月収や養うべき家族があること、その他借入など、自分が遠隔地で裁判を行う費用がないこと。
・事情をよく知っているのは、本社の人間ではなく、支店の窓口担当であること。